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津地方裁判所 昭和24年(行)11号 判決

原告 藤田喜三郎 外十六名

被告 三重県農地委員会

一、主  文

被告が昭和二十四年二月二十八日付をもつて原告の訴願を棄却した裁決はこれを取消す。

原告その余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は「昭和二十四年二月二十八日被告三重県農地委員会がなした原告等の訴願に対する裁決を取消す。原告等共有の利紙目録記載の土地の買收を許さない。訴訟費用は被告委員会の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、昭和二十三年九月二十八日訴外内城田村農地委員会(以下訴外村農委と略称する)は自作農創設特別措置法(以下單に自創法と略称する)第十五条に基いて原告等共有の別紙目録記載の土地(以下單に本件土地と略称する)を農業用施設として買收する旨の公告をしたので原告等はこれに対し異議申立をしたが同委員会は同月二十三日右異議却下の決定をした。そこで同年十一月六日更に被告委員会に訴願したところ同委員会も亦昭和二十四年二月二十八日右訴願却下の裁決をした。しかし右裁決は左記理由により取消さるべきである。即ち

(1)  訴外村農委は前敍の買收公告に先立ち同年六月二十日に本件土地を農業用施設として買收する計画を樹てたので原告等は法定期間内に異議の申立をしたところ同委員会はこれに対し何等の意思表示をなすことなく同年九月二十八日再び本件土地買收の公告をしたのであるが右第二次の買收については公告のみがなされたのみでその基本となるべき買收計画の樹立手続がなされていない。即ち訴外村農委にはこれを認むべき書類が何も存在していないのであるからかかる買收処分の違法であることは明白である。仮に買收計画が樹立されたとしても同一の土地に対し二重の買收計画をなしたことになるからかかる手続は違法である。買收計画に対し適法な異議申立があれば市町村農地委員会はこれに対し決定をした後農地買收計画につき都道府県農地委員会の承認を受けるのが正規の手続であるのに訴外村農委はその手続を履践することなく昭和二十三年六月二十九日被告委員会にこれが承認申請をなし、被告委員会も同年七月二日これを承認したので原告等は同年八月二十七日津地方裁判所へ訴(同廳昭和二十三年(行)第九号事件)を提起してその処分の違法を指摘したところ被告委員会はその非を悟つたためかこれより曩同年七月十二日本件土地を買收計画承認より除外するに至つたしかるに訴外村農委は前述の如く更に訴外中西秋藏外二名に買收申請をなさしめて本件土地に対し買收計画を樹立し、被告委員会は前敍第一次の買收計画に対する原告等の異議につき訴外村農委が何等決定をしていないことを知りながら第二次の買收計画に対して承認を与えたのである。從つてこれを不服とする原告等の訴願を却下する旨の裁決をしたことは違法である。なお訴外村農委が前敍第二次買收計画樹立当時には前敍の如くこれをなしたと認むべき何等の書類が存在しないのであるからこの点よりしても右買收計画は違法でありひいては被告委員会の訴願棄却の裁決も亦違法である。

(2)  本件土地は農業用施設として買收計画を樹立されたものであるが、買收申請人たる訴外中西秋藏、同小岸乙吉、同小岸秀一の三名は自創法第十五条所定の買收申請をする資格を有する者ではない(なおこれが申請書には右三名のほか三十二名のものが右買收につき連帶申請をしたように記載されているがこれ等のものは決して申請人ではない。)即ち小岸乙吉は農地を訴外青木善次郎から買受けたが当時法規上売買登記手続が不可能であつたのでこれを潜脱するため形式上自創法による買收売渡の手続をとつて貰つたにすぎず中西秋藏も農地につき買收申請をなしてこれが売渡を受けたが該農地の所有者が親戚の者であつたため、当初買收申請をする意思がなかつたのであるが訴外村農委から勧められて申請をなすに至つたものであり又小岸秀一も地主との間に売買契約成立後形式上買收申請をしてその売渡を受けたものであるから自創法第十五条はかかる者には適用されない。又

(3)  原告のうち中村重助、藤田小太郎、中村儀一、山本久太郎、中西良助、西井助雄、藤田政市の七名は度会郡内城田村大字下久具に耕地を所有し本件土地を敷地とする溜池及び溝を利用しているものであるからこれを農業用施設にして買收せられる場合はその売渡を受ける者の中には右七名は当然加えらるべきものである然るに右七名の者は本件土地の共有者であること前敍の通りであるからかくては買收したものを更に買收せられたものに売渡すという不自然不必要の結果をもたらすこととなるのであつて此の点からしても本件買收計画は不当である。

(4)  そもそも本件土地を敷地とする溜池及び溝は明治二年度会郡内城田村大字下久具新田の所有者等がその所有の田へ引水するために築造して今日まで利用してきたものであつて、当時本件土地を承役地、右新田の土地を要役地とする地役権が設定せられたものである。從つて小作地等と趣を異にし要役地の所有者は承役地の所有権を得なくても自作農としてこれを利用するに何等支障をきたすものではない。故に本件土地を農業用施設として買收するが如きは法規に便乘して他人の権利を剥奪せんとするものであつて権利の濫用である。ことに本件土地については原告等から右土地の辨米請求の訴を下久具新田所有者等に対して提起し津地方裁判所の第一審において原告等勝訴となり目下名古屋高等裁判所に繋属中であり、本件買收申請人等が右辨米の支払を免れんがために自創法を利用せんとしたことが明白である。又

(5)  自創法第三条第十五条には同法によつて買收すべき物件を限定し、市町村農地委員会の採量によつて如何なる土地でも買收し得るものとしていないし、又自創法第十五条にいわゆる農業用施設とは施設そのものをいい施設の存する土地を包含していない。而して又自創法には地役権そのものや承役地に附從する特異性の物的債権(本件土地使用に対する辨米請求権)を買收し得る旨の規定がない。從つて訴外村農委の自創法において買收を許容していない地役権及び原告等の保有する前敍の権利を無視した本件土地の所有権のみの買收計画を被告委員会において承認したのは違法である。都道府県農地委員会は合法的訴願を受理したときは法定期間内に右訴に対する裁決をしなければならぬことは自創法第七条に明規されているところであるのに被告委員会は昭和二十三年十一月六日になしたる原告等の訴願に対し昭和二十四年二月二十八日まで裁決をしなかつたのであるからかかる裁決は法規に違反し無效である。なお仮りに本件土地の売渡が許容されるとしてもその買收価格は低きに失した自創法第十五条第三項に規定する時価を参酌していないから不当である。

よつて以上いずれの点よりするも訴外村農委の定めた本件土地に対する買收計画ならびにこれを支持して原告等の訴願を棄却した本件裁決は違法のものであるからこれが右裁決の取消と本件土地に対する買收処分の不許を求めるため本訴に及んだものであると陳述した。(立証省略)

被告訴訟代理人は原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。との判決を求め、答弁として原告が請求原因として主張する事実中昭和二十三年九月二十八日訴外村農委が本件土地につき自創法第十五条に基いて本件土地を農業用施設として買收計画を樹て、原告等がこれに対しその主張の日に異議申立をしたが同委員会は原告主張の日にこれを却下する旨の決定をしたので原告等は更にその主張の日に被告委員会に訴願したが被告委員会も亦原告主張の日に右訴願を却下したことはこれを認めるが、その余の事実は爭う。原告は訴外村農委が二重に本件土地の買收手続を行つた違法があると主張するが本件土地に対する第一回の買收計画は原告等の異議申立に対して訴外村農委が決定をしなかつたという理由で被告委員会の承認が得られなかつたので訴外村農委は改めて同年九月二十八日本件土地について買收計画を樹立した上同年十月十二日に右第一次の買收計画が被告委員会の承諾を得られなかつた事情を原告等に通知しているのであるから第一次の買收計画は後になされた買收計画によつて取消されたものというべきであつて何等違法でない。又訴外中西秋藏、小岸乙吉、小岸秀一は本件農業用施設の蒙利地域にある自創法第三条による買收農地(秋藏は田一反十七歩、乙吉は田四畝一歩、秀一は田三畝歩)を政府よりそれぞれ売渡を受けて自作農となつたものであるから同法第十五条に定める買收申請者たる資格を有するものである。なお右三名の買收申請に際し訴外大西増吉ほか二十八名のものが連署しているのは本件土地の買收申請がこれらの者にも重大な利害関係があるので右申請が相当であることを明らかにせんがために取られた手段に過ぎないので買收申請人としての連署でないことは原告主張の通りである。又本件農業用施設はその蒙利区域内の農地即ち原告等主張の原告七名所有の農地合計一町五畝十八歩を含む総計約十町六反歩(この所有者数三十九名)の所有者に最も公平に利用させなければならないことは当然であるが、その本然の使命を十分に果させるために、これを何人に売渡すべきかは売渡計画樹立の際決定されるべきであるから右原告七名が当然に売渡を受ける者の中に加わるべきだとの原告主張は原告独自の見解というべきであり且つかかる所論は売渡計画に対して主張するべきで本件買收計画の当否には何等関係がないのである。なお原告等は本件土地は地役権の目的となつておるのであるから買收は不必要であるかの如く主張しているが、たとえ本件申請人等が地役権を有しているとしても右地役権では蒙利地の利用上十分でないと認めてこれに対し買收計画を樹立することは村農委の自由裁量に属するものである從つて村農委が右申請人等の申請を相当と認めて買收計画を樹立したことは正当である。而も本件土地についての辨米の支払につき明治初年以來紛議を重ねていることに徴してもこれが買收計画が妥当のものである証左とすることができる。なお自創法第十五条第二項に準用せられる同法第十二条第二項によれば政府が買收した土地に地役権が設定せられているときは從前と同一の條件で地役権が設定されたものと看倣されることになつているから実質的に從前の地役権が消滅しないことが明かであり、又同法第六条第二項によつて買收土地の対価が支払われるのは買收によつて所有者が小作料その他の所有権に基く請求権を失うためであるからこの点より考えても土地に所有権以外の権利が存する場合でもその所有権のみを買收し得るものというべきである。從つていずれの点よりするも原告の本件請求は失当である。なお原告の本件農業用施設買收対価を不当とする主張に対しては被告において相手方たる適格を有しないから此の点に関する原告の主張も亦失当であると述べた。(立証省略)

三、理  由

昭和二十三年九月二十八日訴外村農委が自創法第十五条に基き本件土地を農業用施設として買收する計画を樹て、原告等がこれに対し異議の申立をしたが同村農委が右申立却下の決定をしたので原告等は更に該決定に対し被告委員会に訴願の申立をなし、同委員会において原告等主張の日に右訴願却下の裁決をしたことは当事者間に爭がない。而して原告等は右買收計画及びこれを認容した右裁決の違法である理由として先ず(一)訴外中西秋藏、同小岸乙吉、同小岸秀一には本件土地の買收申請をなす資格を有しないと主張するからこの点につき按ずると成立に爭のない甲第八号証の一、二、同第九号証、乙第一、第二、第四号証の各記載内容に証人中西秋藏、同小岸秀一、同中田才助の各証言を綜合すると中西秋藏は昭和二十二年十二月二日本件農業用施設の蒙利区域内たる訴外中西半三郎の所有していた度会郡内城田村大字下久具千二百二十番田四畝八歩同所千二百三十三番田三畝五歩を自創法に基づき買受けたがこれは中西秋藏が訴外村農委から勧められたことによるもので右勧告前には買收申請をする意思がなかつたこと、小岸秀一は同日右同樣の区域内たる訴外小岸大三の所有していた同所千三百四十番田三畝歩を自創法に基き買受けた形式をとつたが事実上はその以前に右両者間において売買契約が成立していたのを普通の売買では所有権移転登記ができなかつた関係から前敍のような形式をとつたこと、小岸乙吉は同日右同樣区域内たる訴外青木善次郎の所有していた同所五百四十三番田四畝歩を自創法に基き買受けたが右秀一と同樣の事情により同樣の形式をとつたこと(此の点に反する証人竹内延平の証言は措信しない)及び右三名が本件土地を、自創法第十五条の規定により買收申請をしたことが認められるがたとえ右の如く自創法による農地買受以前に右認定の如き事情があつても自創法による買受が無效となるとは考えられない。かえつて同法第三条第五項第七号の規定によればたとえ同条の他の各項に該当しなくとも農地の所有者が市町村農地委員会に対し政府に買收を申し出たときはこれを政府において買收し得ることになつているのであるから、農地所有者がその小作人に売渡す話合のもとにその手段として農地買收の手続をとつてもその買收手續にして違法でない限り有効のものである。而して右手続の違法であることについては何等の主張、立証のない本件についてはその手続は有効になされたものというべく、從つて前敍三名は自創法第十五条に規定されている同法第三条により買收された農地につき自作農となつた者としてその農地の利用上必要なる農業用施設等の買收を申請する資格を有するものというべきであつて此の点に関する原告の主張は採用し得ない。(二)次に原告は訴外村農委が本件土地に対し二重の買收計画を樹立したから違法であると主張し、被告はこれを爭うから此の点について審究すると成立に爭のない甲第十二号証、乙第三号証、第五号証、第六号証の各記載内容に証人竹内延平の証言(前記措信しない部分を除く)を綜合すると前認定のような中西秋藏外二名が本件農業用施設の蒙利地域内の農地を買受けた結果、昭和二十三年一月二十六日自創法第十五条第一項第一号に基き本件農業用施設の買收申請をしたので訴外村農委において昭和二十三年六月十九日これに対し買收計画を樹立し同月二十九日被告委員会に承認申請をしたところ、同委員会は同年七月二日これを承認したが更に同月十二日に至り訴外村農委が右買收計画に対する原告等の異議申立につき何等決定を興えなかつたという理由のもとに買收承認より除外する旨の決定をしたので訴外村農委より原告等にその旨を通知したが第一次買收計画を特に取消す旨の表示をしなかつたこと、而して同年九月十七日更に前敍三名から本件農業用施設の買收申請がありこれに基いて同月二十二日訴外村農委が本件土地の買收計画を決議して、その旨公告したことが認められ他に右認定を覆すに足る証拠がない。而して右認定事実に從えば第一次の買收計画が訴外村農委の特利の意思表示によつて取消されていないことは明かであるが、再度の買收申請に基き買收計画を樹て直した以上新になされた行政行爲が何等かの理由により取消されない限り右行爲によつて前の行政行爲(第一次買收計画)は一応取消されたものと解すべきである。よつてこの点に関する原告の主張も亦採用し難い。なお原告は訴外村農委が第二次買收計画を樹立した当時これを決議したと認むべき何等の証拠が存在しないから該買收計画は違法であると主張するが右買收計画につき訴外村農委の決議がなされていることは前認定の如くであるから右主張も亦採用し得ない。(三)更に原告は本件買收は本件土地上に存する地役権、辨米請求権等の存在を無視して該所有権のみを買收した違法があると主張するが自創法第十二条第一、二項、第十五条第一、三項によれば地役権、辨米請求権等に関係なく本件土地の所有権のみを買收し得るものと解されるから右原告の主張は理由がない。(四)よつて進んで本件買收計画が相当なりや否やについて爭があるからこの点につき按ずると成立に爭のない甲第一号証、同第六、第七号証、同第九、第十号証、同第十二号証、乙第二号証、同第五乃至第七号証並に檢証の結果及び証人竹内延平(前記措信しない部分を除く)、同浦田伊八の各証言を綜合すると明治二年頃三重県度会郡下久具村の村民訴外大西又右衞門外数十名の者が下久具村において約十町歩の新田を開発するにあたつて灌漑用水を得るため本件土地を溜池敷及び溝敷にすることについて同郡上久具村、下久具村両村民全体の間に契約が成立し下久具村において本件土地使用の報償として毎年末に池敷地に対しては玄米十一石四斗五升五合溝敷地とその附属地に対しては玄米七石七升五合以上合計十八石五斗三升の辨米を上久具村に納めることとしたがその当時は町村制施行前のことであつたから右のように村と村との契約のかたちをとつたがその後村民個人対個人の関係になつたこと、爾來今日に至るまで辨米納入に関し度々右両者間に爭を生じたが明治二十七年に安濃津地方裁判所において当時の本件土地使用者たる下久具の住民に辨米支払義務がある旨の判決があつてその判決は確定し、更に昭和十一年度以降の辨米の支払につき原告等を含む上久具村在住の者より下久具の本件土地使用者に対し同裁判所に訴を提起し同廳において右同趣旨の判決がなされ現在名古屋高等裁判所に該訴訟が繋属していること、本件農業用施設の使用者は前認定の中西秋藏外二名だけではなく下久具の大西増吉外三十三名もその使用であることがいずれも認められ他に右認定を左右するに足る証拠がない。果して然らば本件農業用施設の買收によつて上久具住民と下久具の住民との辨米についての爭は終熄する結果となるわけであるがその施設の利用者は中西秋藏外二名にとどまらず他に三十数名の使用者があるのであるから売渡の場合はこれ等すべての利用者に売渡すのでなければ自創法第一条にいわゆる耕作者の地位を安定しその労働の成果を公正に享受させるため土地の農業上の利用を増進して農業生産力の発達を期するという目的を達することとはならないのであるが同法第二十九条、同法施行令第二十四条によれば自創法第十五条の規定により政府の買收した農業用施設を買い受けることのできる者は、これにつき使用收益を目的とする権利がある場合においては当該権利を有するもので自創法第十六条により農地の売渡を受けたもの、これらのものの組織する農業協同組合その他の団体で中央農地委員会議、都道府県農地委員会又は市町村農地委員会の指定するもの及び市町村、これつき使用收益を目的とする権利がない場合においては同条の規定により農地の売渡を受けたもので当該農地の利用上当該農業用施設の必要とするもの、これらの者の組織する農業協同組合その他の団体で中央農地委員会議、都道府県農地委員会又は市町村農番委員会の指定するもの及び市町村と規定されている。而して又本件農業用施設につき使用收益の権利があり且つ自創法第十六条の規定により農地の売渡を受けたものは前敍中西秋藏外二名のみで他にこれに該当する者があることについては何等の主張も立証もなされていない。然らば同施行令第二十四条の規定により政府より売渡を受け得るものは右三名又はこれら三名の組織する団体若しくは度会郡内城田村に売渡すより他に途がないこととなる。かくては右いずれのものに売渡されたとしても下久具新田耕作者の大部分は依然として右売渡を受けたものに対し本件農業用施設の利用に伴う使用料支払義務を負担することとなるから本件農業用施設買收計画はただに原告等の本件農業用施設に対する從來の権益を剥奪するに止まり右新田耕作者に何等利益を齎さないこととなるばかりでなく本件農業用施設の共有者にして且つその施設の使用者である原告中村重助、藤田小太郎、中村儀一、山本久太郎、中西良助、西井助雄、藤田政市の七名(この点については当事者に爭がない)は自己共有の本件共有権を買收され、これを使用するためその使用料を支払わなければならない立場になるのである。なお前記乙第二号証の記載に中西、竹内両証人の供述の一部及び弁論の全趣旨を綜合すると中西秋藏外二名が本件農業用施設の買收申請をしたのは現に名古屋高等裁判所に繋属中の原告等と内城田村大字下久具新田耕作者たる大西増吉外二十八名間の本件農業用施設の辨米請求訴訟に関連して新田耕作者等が右三名が買收申請をなし得る地位にあることを奇貨として申請の趣旨さえよく解していない同人等をしてこれが申請をなさしめたることが認められる果して然らばかかる買收申請は著しく不相当といわざるを得ないから、訴外農委がこれを相当と認定して本件農業用施設につき買收計画を樹立したことは違法であり、かかる違法の計画を支持して原告等の訴願を棄却した被告委員会の裁決も亦違法として取消さるべきものであるから爾余の判断を省略し原告の本訴請求を正当として認容するが本件土地の買收を許さないことを求める旨の請求は司法をして行政を侵かすこととなる怖れがあるからかかる請求は許されないと解するが相当と思われるのでこの部分の請求はこれを棄却し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 木戸和喜男 平谷新五 可知鴻平)

(目録省略)

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